はじめに
本レポートは、バーチャルYouTuber（VTuber）事務所「ホロライブプロダクション」傘下のグループ「hololive DEV_IS」に所属していた元VTuber、火威青（ひおどし あお）さんに関する詳細なプロフィールと、2025年10月3日に至った卒業の経緯について、公式発表および公開情報に基づきまとめたものです。
火威青さんは、音楽VTuberグループ「ReGLOSS」のメンバーとして、そのボーイッシュな魅力と漫画家という確固たる個性で多くのファンを魅了しました。
本レポートでは、彼女の活動期間中に見せた多面的な人物像と才能を深く掘り下げるとともに、活動休止から卒業に至るまでの背景を正確に記述することを目的とします。
火威青：プロフィール詳細
基本情報と公式設定
火威青さんは、「孤独を愛する、と周囲から思われている漫画家」という公式設定を持つVTuberです。
クールな振る舞いの内側には、かなりのオタク気質を隠しているという二面性が、彼女のキャラクターの核を成していました。
その基本情報は以下の通りです。
表1: 火威青 プロフィール概要
| 項目 | 詳細 |
| 名前 | 火威青（ひおどし あお） |
| 所属 | ホロライブプロダクション |
| ユニット | hololive DEV_IS「ReGLOSS」 |
| 活動開始日 | 2023年9月4日 |
| 初配信日 | 2023年9月9日 |
| 誕生日 | 2月27日 |
| 身長 | 171cm |
| イラストレーター | むっしゅ |
| Live2Dモデラー | ヲニ村 |
| ファンネーム | 読者 |
| 配信タグ | #青原稿中 |
| アートタグ | #青ペン |
| 推しマーク | 🖋️ |
彼女のキャラクターを視覚的に創造したのは、イラストレーターのむっしゅ氏とLive2Dモデラーのヲニ村氏です。
ファンネームは「読者」とされ、これは彼女の漫画家という設定に完璧に合致しています。
さらに、女性ファンは「火女（ひめ）」、男性ファンは「火男（ひょっとこ）」という愛称で呼ばれるなど、独自のコミュニティ文化が形成されていました。
人物像と個性
火威青さんの最大の魅力は、その多層的な人物像にありました。
公式に「ボーイッシュ担当」とされている通り、一人称に「僕」を用い、その佇まいは「池面」や「宝塚系」と評されるなど、中性的な魅力で多くのファン、特に女性ファンを惹きつけました。
特技として「女性を狂わせること」を挙げるなど、このキャラクター性を前面に押し出したエンターテインメントを展開していました。
しかし、そのクールな外見とは裏腹に、内面は情熱的な「オタク」でした。
自宅に多くのBL（ボーイズラブ）関連書籍を所有し、いわゆる「腐女子」としての一面を隠さない姿は、彼女の人間味を深く感じさせました。
この「クールなイケメン」という表の顔と、「親しみやすいオタク」という内面のギャップこそが、彼女のキャラクターに深みを与え、ファンが強い共感を覚える源泉となっていました。
この二面性は単なる矛盾ではなく、 aspirational（憧れの対象）な側面と relatable（共感可能）な側面を両立させる、計算されたキャラクター設計の妙であったと言えます。
また、二次方程式の計算に苦戦するなど数学が苦手な「残念系」な一面を見せる一方で、「薔薇」のような難しい漢字を書きこなすなど、得意不得意がはっきりしている点も彼女の個性でした。
このような「ポンコツ」と評される愛すべき欠点は、彼女をより身近な存在としてファンに認識させました。
デビュー前は自身を「陰キャ（内向的な性格）」と語っていましたが、活動を通じて多くのコラボレーションに参加し、社交性を成長させていきました。
特に、ホロライブの先輩である宝鐘マリンさんとは実の姉妹のように親しい関係を築き、そのやり取りは多くのファンに親しまれました。
時折、配信に実の母親が登場することも、彼女のユニークで家庭的な一面を物語っています。
才能と趣味
火威青さんの「漫画家」という設定は、単なるキャラクターの背景にとどまらず、彼女自身の本物のスキルに裏打ちされたものでした。
デビュー前には実際に雑誌でイラストレーターとして長期にわたり活動していた経歴を持ち、締め切りギリギリで作業することが多くとも、一度も納期を破ったことがないというプロ意識の高さも語られています。
この本物の経歴が、彼女の活動全体に説得力と真正性を与えていました。
また、彼女はVRChatのベテランユーザーでもあり、5年以上の経験を持っていました。
ホロライブの同僚からは、彼女のVRChat配信が「本当に革命的だった」と評されるほど、その分野における先駆者的な存在でした。
彼女はプラットフォームの可能性を最大限に引き出し、新しい形のエンターテインメントを提示していたことがうかがえます。
その他の趣味として、文房具集め、カフェ巡り、手帳への記録などが挙げられ、彼女のクリエイティブで落ち着いた私生活の一端を垣間見ることができます。
ゲームに関しては、ホラーゲームや操作精度の高い競技系ゲームは苦手とする一方、「Among Us」のような人狼系ゲームやシミュレーションゲームを得意とし、心理戦や戦略的思考に長けていることを示していました。
2025年10月3日の卒業：経緯と理由
活動休止の発表
卒業に至る最初の動きは、2025年3月に発表された活動休止でした。
運営元のカバー株式会社は、火威青さんが健康上の理由により活動を休止することを告知しました。
その際、医療機関からの診断結果として、病名が「適応障害」であることが公表されました。
この決定は、何よりも本人の体調回復を最優先に考えてのものでした。
休止期間中も、「歌ってみた」動画が投稿されたり、マネージャーによる代理投稿でSNSが更新されたりするなど、復帰への期待が持たれていました。
卒業の公式発表と背景
しかし、活動再開には至らず、2025年10月3日、カバー株式会社は火威青さんが同日をもってホロライブプロダクションを卒業することを正式に発表しました。
卒業の理由について、公式発表では「適応障害のため活動を休止し、回復を目指しておりましたが、活動を継続していくことが難しい状況である」と説明されました。
これにより、卒業が3月に公表された健康問題に直接起因するものであることが明確に示されました。
卒業配信などは特に予定されませんでした。
この一連の対応は、近年のVTuber業界におけるタレントのメンタルヘルスへの配慮の高まりを象徴する事例と見ることができます。
かつてエンターテインメント業界では、タレントの降板理由が曖昧にされることも少なくありませんでしたが、今回のように具体的な病名を公表し、健康を理由とした卒業の経緯を丁寧に説明する姿勢は、憶測やあらぬ噂が広がるのを防ぎました。
この透明性の高いコミュニケーションは、ファンコミュニティが状況を理解し、混乱や反発ではなく、共感と支援をもってタレントの決断を受け入れる土壌を育みました。
これは、タレントの心身の健康を第一に考えるという企業の姿勢を示すものであり、業界全体にとって健全な前例となり得ます。
卒業に伴い、ファンレターの受付は2025年10月31日到着分まで、メンバーシップ限定コンテンツの公開は2026年1月31日までと、各種サービスの終了スケジュールも告知されました。
最後のメッセージとコミュニティの反応
ファンへの言葉
卒業発表に際し、火威青さんのX（旧Twitter）アカウントを通じて、マネージャーの代理投稿による最後のメッセージがファンに向けて発信されました。
その全文は以下の通りです。
応援してくれるみんなへ 短い間だったけれど、ReGLOSSのメンバーとしてホロライブで過ごせた時間は夢のような時間でした。
出会ってくれて本当にありがとう。
僕はこれからも、読者を愛し続けることを誓います。
これだけは忘れないでね。
No1イケメン青くんとの約束だよ！
名残惜しいけど、またね🖊️
このメッセージには、ホロライブでの活動への感謝、そしてファンである「読者」への変わらぬ愛情が込められています。
最後まで「漫画家」そして「No1イケメン青くん」としてのキャラクターを貫き、ファンとの絆を再確認する言葉で締めくくられています。
仲間からの惜別の声
彼女の卒業は、ホロライブの仲間たちにも大きな衝撃を与えました。
所属ユニット「ReGLOSS」のメンバーは、別れの歌として米津玄師の楽曲「さよーならまたいつか！」のカバー動画を公開し、音楽グループならではの形で彼女を送り出しました。
ReGLOSSの轟はじめさんは「青たんと泣いたり笑ったり一緒に乗り越えた日々、大切な思い出です」と語り、グループに「ぽっかり空いてしまっ」た席への寂しさを吐露しました。
先輩メンバーからも、「青くんのVRC配信は本当に革命的だった」「ゆっくり休んでね」といった、彼女の才能を惜しみ、今後の幸せを願う温かいメッセージが多数寄せられました。
また、ホロライブ公式YouTubeチャンネルでは、彼女のこれまでの活動をまとめた記念動画「【火威青】2年間の活動に、ありがとう【Shiny Smily Story】」が公開され、事務所全体として彼女の貢献に感謝の意が示されました。
これらの反応は、彼女が短い活動期間の中で、いかに多くの仲間から愛され、尊敬されていたかを物語っています。
結び
火威青さんは、プロのアーティストとしての確かな技術、VRChatというプラットフォームにおける革新的な才能、そして「イケメン」と「オタク」の二面性を併せ持つ魅力的なペルソナをホロライブにもたらした、唯一無二のタレントでした。
約2年という活動期間は決して長くはありませんでしたが、その強烈な個性とコンテンツは多くの人々の記憶に深く刻まれました。
彼女のキャリアは、2025年10月3日、公表されていた適応障害からの回復が叶わず、活動継続が困難であるという健康上の理由によって幕を閉じました。
彼女が残したものは、制作したコンテンツやファンとの思い出だけではありません。
彼女の卒業を巡る一連の出来事は、タレントのメンタルヘルスを重視し、透明性のあるコミュニケーションを尊重するという、バーチャルエンターテインメント業界の成熟を示す重要な一例となりました。
火威青さんが築き上げた功績と、彼女が示した未来への教訓は、これからも語り継がれていくことでしょう。
