
1. 序論:Kawaii Metalの創出から世界的アイコンへの進化
本記事は、2010年の結成以来、「アイドルとメタルの融合」という前代未聞のコンセプトを掲げ、世界の音楽シーンに衝撃を与え続けているBABYMETALの楽曲に関する、網羅的かつ詳細な調査レポートです。
結成初期の楽曲から、2025年8月にリリースされた最新アルバム『METAL FORTH』に至るまで、全スタジオアルバムの収録曲、楽曲ごとの詳細なクレジット情報、音楽的特徴、そしてファンや一般層からの支持傾向を示す人気曲ランキングについて、徹底的な分析を行います。
BABYMETALの音楽性は、スラッシュメタル、メロディックスピードメタル、デスメタルといった重厚かつ攻撃的なサウンドに、J-POP特有のキャッチーなメロディライン、シンセサイザー、そして「Kawaii(可愛い)」要素を融合させた「Kawaii Metal」として定義されます。
しかし、その活動歴が進むにつれて、プログレッシブ・ロック、フォーク・メタル、インド音楽、トラップ、そして最新作で見られるエレクトロニック・コア(Electronicore)など、ジャンルの境界を破壊し続けています。
本稿では、一般的に知られる代表曲だけでなく、アルバムの深層にある楽曲(Deep Cuts)や、楽曲制作に携わった「神バンド」を含むクリエイター陣の功績、さらには2025年の最新動向にも焦点を当て、BABYMETALの音楽的変遷と、なぜ彼女たちの楽曲が世界中で熱狂的に支持されるのか、そのメカニズムを詳らかに解説いたします。
BABYMETAL結成15周年「15 BABYMETAL YEARS」を記念して、ファンによるBABYMETALの伝説の15曲を選出する「15 LEGEND SONGS TOURNAMENT」の開催が決定!!
選ばれし15曲はどの曲か?その15曲の運命はいかに...キツネ様のみぞ知る。全ての結末は、2026年1月10日(土)、11日(日)にさいたまスーパーアリーナにて開催される「BABYMETAL WORLD TOUR 2025-2026 SPECIAL ARENA SHOW IN JAPAN LEGEND - METAL FORTH」結成15周年を迎えるステージで明らかになる!!
本記事を参考に、あなたも伝説の15曲を選んでみてください!
2. 人気曲ランキング分析:データが示す「支持される楽曲」の傾向と構造
BABYMETALの楽曲人気を客観的に測る指標として、国内の一般層の動向を反映する「カラオケランキング」と、海外のコアファン層および現在の世界的トレンドを反映する「ストリーミング再生数」の2つの軸で分析を行いました。
これにより、国内での「参加型エンターテインメント」としての側面と、海外での「純粋な音楽評価」としての側面の双方が浮き彫りになります。
2.1 カラオケ人気ランキング(JOYSOUND・DAM 総合データ分析)
国内の主要カラオケ機種(JOYSOUND、DAM)における選曲データおよび人気曲ランキングに基づくと、ライブでの盛り上がり(コールアンドレスポンス)や、初期のインパクトが強い楽曲が上位を占める傾向にあります。
表 2-1:BABYMETAL カラオケ人気楽曲ランキング(2024-2025年版)
| 順位 | 曲名 | 収録アルバム | 作詞・作曲・編曲(主要クレジット) | 人気の要因・分析 |
| 1 | ギミチョコ!! | BABYMETAL | 作詞: MK-METAL, KxBxMETAL 作曲・編曲: TAKESHI UEDA | 海外ブレイクの契機となった楽曲。早口パートの歌唱難易度とサビのキャッチーさが挑戦意欲を掻き立てる。 |
| 2 | メギツネ | BABYMETAL | 作詞: MK-METAL, NORiMETAL 作曲: NORiMETAL 編曲: Yuyoyuppe | 「和」とメタルの融合。「ソイヤ!」の掛け声が宴会やパーティでの盛り上げ曲として定着しており、一般層の知名度も高い。 |
| 3 | イジメ、ダメ、ゼッタイ | BABYMETAL | 作詞: Nakametal, Tsubometal 作曲: KxBxMETAL, Tsubometal, Takemetal 編曲:教頭 | ライブでの「ダメジャンプ」が有名。メロディックスピードメタルの疾走感が、歌唱時の高揚感を生む。 |
| 4 | 紅月 -アカツキ- | BABYMETAL | 作詞・作曲: Nakametal 編曲:教頭 | SU-METALのソロ曲。X JAPANへのオマージュを感じさせる叙情的なバラードであり、歌唱力を誇示したい層に支持されている。 |
| 5 | ヘドバンギャー!! | BABYMETAL | 作詞: Edometal, Nakametal 作曲: NARASAKI 編曲: NARASAKI | バンギャル(ヴィジュアル系ファン)文化を歌詞にした、ヘッドバンギング必須のライブアンセム。サビの爆発力が魅力。 |
| 6 | Road of Resistance | METAL RESISTANCE | 作詞: Kitsune of Metal God, MK-METAL, KxBxMETAL 作曲: Mish-Mosh, NORiMETAL, KYT-METAL | DragonForceが参加した超高速メロスピ曲。「Wow wow」というシンガロングパートがあり、グループでの歌唱に適している。 |
| 7 | KARATE | METAL RESISTANCE | 作詞・作曲・編曲: Yuyoyuppe | 「セイヤ、ソイヤ」の力強い掛け声と、エモーショナルなサビが特徴。中期の代表曲として不動の地位を築いている。 |
| 8 | PA PA YA!! (feat. F.HERO) | METAL GALAXY | 作詞・作曲: SIAMMETAL | タオル回し曲として定着。タイのラッパーF.HEROとのコラボによるお祭りソングで、夏の定番曲化している。 |
| 9 | Monochrome | THE OTHER ONE | 作曲: Yuyoyuppe (推測) | スマホライトを点灯する演出が定着した、近年屈指のエモーショナルな楽曲。ミドルテンポで歌いやすい点もランクインの要因。 |
| 10 | RATATATA | METAL FORTH | 作詞・作曲: Electric Callboy, NORiMETAL, MK-METAL | 2024-2025年の最大のヒット曲。Electric Callboyとのコラボで、ダンスとメタルの融合が再評価され急上昇中。 |
分析による洞察:
カラオケランキングの上位は、依然として1stアルバム『BABYMETAL』の楽曲が支配的です。
これは、同アルバムが社会現象的なインパクトを与えたことの証左であり、10年以上経過しても色褪せない楽曲強度を持っています。
一方で、『METAL FORTH』収録の「RATATATA」が急速にランクインしており、最新のコラボレーション路線が新規ファン層を開拓し、カラオケ需要にも直結していることが伺えます。
特に「RATATATA」は、そのダンスビートとキャッチーなサビが、TikTokなどのSNS経由で若年層に浸透した結果と考えられます。
2.2 Spotifyストリーミング再生数ランキング(グローバル・2025年最新動向)
世界規模での聴取傾向を示すSpotify等のストリーミングサービスのデータでは、海外のメタルファンやフェスティバルでのセットリスト、そしてバイラルヒットの影響が色濃く反映されています。
ここでは、再生数の伸び率やデイリー再生数を含めた総合的な「現在進行形の人気」を分析します。
表 2-2:Spotify ストリーミング再生数・人気楽曲分析(2025年時点)
| 順位 | 曲名 | デイリー再生傾向 | グローバルでの評価・備考 |
| 1 | Gimme Chocolate!! | 非常に高い | 長年不動の1位。BABYMETALの「名刺」代わりの一曲として、プレイリストへの採用率が圧倒的に高い。 |
| 2 | RATATATA | 爆発的急上昇 | 2024年のリリース以来、驚異的な再生数を記録。2025年のデイリー再生数では、過去の名曲を上回る日も頻出しており、バンド史上最速のペースで再生数を伸ばしている。 |
| 3 | Megitsune | 高位安定 | 「日本らしさ」と「ブレイクダウン」の融合が海外ファンに強く支持されている。リアクション動画などでも定番の楽曲。 |
| 4 | Kingslayer | 非常に高い | Bring Me The Horizonの楽曲だが、BABYMETAL参加曲としてトップクラスの人気。この曲からのファン流入が非常に多い。 |
| 5 | PA PA YA!! (feat. F.HERO) | 安定 | ライブでの盛り上がりが映像化されることで、継続的に再生されている。アジア圏での人気も高い。 |
| 6 | KARATE | 安定 | 海外メディアでの露出が多く、モダンヘヴィネス(Djent的なリフ)なサウンドが欧米のメタルファンに高評価。 |
| 7 | Road of Resistance | 安定 | パワーメタルファンからの根強い支持。DragonForceファン層との重複も大きい。 |
| 8 | Distortion (feat. Alissa White-Gluz) | 中位 | Arch Enemyのアリッサ参加により、よりハードコアなメタル層にリーチしている。 |
| 9 | Headbangeeeeerrrrr!!!!! | 安定 | ライブ映像のインパクトにより、長く愛されているクラシック・チューン。 |
| 10 | Monochrome | 上昇中 | 『THE OTHER ONE』からの楽曲としては最も人気が高いバラード。エモーショナルな旋律が言語の壁を超えて支持されている。 |
分析による洞察:
特筆すべきは「RATATATA」の異常な伸びです。
Electric Callboyとのコラボレーションにより、従来のBABYMETALファンだけでなく、パーティ・メタルやメタルコアのファン層が大量に流入しました。
2025年のデータにおいて、この楽曲は1億再生を突破するペースで推移しており、BABYMETALの「第二の全盛期」を象徴するアンセムとなっています。
また、「Kingslayer」や「RATATATA」のようなコラボレーション楽曲が上位に来ることは、BABYMETALが「孤高の存在」から「世界のメタルシーンのハブ(結節点)」へと変化したことを如実に物語っています。
3. ディスコグラフィ詳細分析:アルバムごとの楽曲変遷と深化
BABYMETALの軌跡は、アルバムごとに明確なコンセプトの変化として現れています。
ここでは、2025年リリースの最新作を含む全5枚のスタジオアルバムについて、収録曲の全貌、楽曲の詳細なクレジット、そしてその音楽的意義について解説します。
3.1 1st Album: 『BABYMETAL』 (2014年2月26日発売)
コンセプト: アイドルとメタルの衝撃的な融合(Kawaii Metalの誕生)
デビューアルバムにしてベストアルバムのような密度を持つ作品です。
世界中に「なんじゃこりゃ(WTF)」という衝撃を与え、YouTubeを通じてバイラルヒットを引き起こしました。
表 3-1:『BABYMETAL』収録曲詳細
| 曲順 | 曲名 | 音楽ジャンル・特徴 | 主要クレジット(敬称略) |
| 1 | BABYMETAL DEATH | デスメタル / シンフォニック | 作曲・編曲: Kitsune of Metal God |
| 2 | メギツネ | 和風メタルコア / ダブステップ | 作詞: MK-METAL, NORiMETAL / 作曲: NORiMETAL / 編曲: Yuyoyuppe |
| 3 | ギミチョコ!! | デジタルハードコア / スラッシュ | 作詞: MK-METAL, KxBxMETAL / 作曲・編曲: TAKESHI UEDA |
| 4 | いいね! | エレクトロコア / ラップ / デス | 作詞: Nakata Caos / 作曲: Mish-Mosh |
| 5 | 紅月 -アカツキ- | メロディックスピードメタル | 作詞・作曲: Nakametal (SU-METALソロ) |
| 6 | ド・キ・ド・キ☆モーニング | アイドルポップ / グルーヴメタル | 作詞: Nakametal / 作曲: NORiMETAL |
| 7 | おねだり大作戦 | ニューメタル / ラップメタル | 作詞: Nakata Caos / 作曲: TEAM-K (BLACK BABYMETAL曲) |
| 8 | 4の歌 | レゲエ / トライバルメタル | 作詞・作曲: BLACK BABYMETAL (YUIMETAL & MOAMETALが関与) |
| 9 | ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト | ダブステップ / メタルコア | 作詞: RYU-METAL / 作曲: TEAM-K |
| 10 | Catch me if you can | インダストリアル / デジロック | 作詞: Edometal / 作曲: NARASAKI |
| 11 | 悪夢の輪舞曲 | プログレッシブ / ゴシック | 作詞・作曲・編曲: Yuyoyuppe (SU-METALソロ) |
| 12 | ヘドバンギャー!! | シンフォニック / メロスピ | 作詞: Edometal / 作曲: NARASAKI |
| 13 | イジメ、ダメ、ゼッタイ | メロディックスピードメタル | 作詞: Nakametal / 作曲: KxBxMETAL |
楽曲詳細解説:
- BABYMETAL DEATH: 歌詞は「B・A・B・Y・M・E・T・A・L」「DEATH」のみで構成され、ライブのオープニング儀式として機能します。Slayerなどのスラッシュメタルへのオマージュが込められています。
- おねだり大作戦: Limp Bizkitなどを彷彿とさせるニューメタルサウンドに乗せて、父親に金銭をねだる小悪魔的な歌詞が歌われます。BLACK BABYMETAL(YUIMETALとMOAMETAL)の代表曲です。
- 4の歌: 「死」を連想させる忌み数である「4」をポジティブに捉え直す楽曲。レゲエのリズムから突如として高速ツーバスのメタルパートへ移行する展開が衝撃的です。
3.2 2nd Album: 『METAL RESISTANCE』 (2016年4月1日発売)
コンセプト: メタルレジスタンスの海外進出
1stの衝撃を「本物のメタル」としての説得力に変えた作品。
DragonForceのギタリスト等が参加し、技術的にも高度化しました。
イギリスのウェンブリー・アリーナ公演を成功させるなど、世界征服への布石となったアルバムです。
表 3-2:『METAL RESISTANCE』主要収録曲詳細
| 曲順 | 曲名 | 音楽ジャンル・特徴 | 主要クレジット・備考 |
| 1 | Road of Resistance | パワーメタル / スピードメタル | ギター: Herman Li, Sam Totman (DragonForce) |
| 2 | KARATE | Djent / ニューメタル | 作曲・編曲: Yuyoyuppe / 「セイヤ!ソイヤ!」の掛け声 |
| 3 | Awadama Fever | ドラムンベース / デジロック | 作曲: TAKESHI UEDA (The Mad Capsule Markets) |
| 4 | YAVA! | スカ / オルタナティブ | スカのリズム(裏打ち)とメタルの融合 |
| 5 | Amore -蒼星- | メロディックスピードメタル | SU-METALソロ / ベースソロ等の超絶技巧 |
| 6 | Meta Taro | バイキングメタル / フォーク | 勇壮な行進曲風 / シンガロングパート |
| 7 | GJ! | ラップメタル / ニューメタル | BLACK BABYMETAL曲 / 重厚なリフ |
| 8 | Sis. Anger | ブラックメタル / デスメタル | BLACK BABYMETAL曲 / 最も攻撃的なドラム |
| 9 | No Rain, No Rainbow | パワーバラード | SU-METALソロ / ピアノとストリングスをフィーチャー |
| 10 | Tales of The Destinies | プログレッシブ・メタル | 変拍子の連続 / Dream Theater的アプローチ |
| 11 | THE ONE | シンフォニック・メタル | 全編英語詞ver.も存在 / 世界との連帯を歌う |
『METAL RESISTANCE』海外版にはFrom Dusk Till Dawnを収録
楽曲詳細解説:
- Tales of The Destinies: 複雑怪奇な構成で知られ、ライブでの再現が極めて困難とされる楽曲です。カオスな展開から、次の曲「THE ONE」へとシームレスに繋がる構成は、アルバムのクライマックスを演出します。
- Sis. Anger: アイドルの声質と、ブラックメタル特有のブラストビートの対比が極限まで高められた楽曲です。歌詞は「ざけんな!」など攻撃的ですが、ユニークな語感で和らげられています。
3.3 3rd Album: 『METAL GALAXY』 (2019年10月11日発売)
コンセプト: メタル銀河の旅(オデッセイ)
YUIMETAL脱退後の新体制で制作された本作は、世界各国の音楽要素を取り入れた多様性が最大の特徴です。
2枚組(Japan Complete EditionではSunとMoon)としてリリースされ、光と闇の世界観を表現しました。
表 3-3:『METAL GALAXY』主要収録曲詳細
| 曲順 | 曲名 | 音楽ジャンル・特徴 | フィーチャリング・クレジット |
| 1 | Future Metal | エレクトロ / インダストリアル | オートチューン全開の導入曲 |
| 2 | DA DA DANCE | ユーロビート / メタル | feat. Tak Matsumoto (B'z) |
| 3 | Elevator Girl | ジャズ / ポストハードコア | 都会的な狂気を感じさせる転調 |
| 4 | Shanti Shanti Shanti | インド音楽 / バングラビート | ボリウッド的な旋律とメタルの融合 |
| 5 | Oh! MAJINAI | フォークメタル / ポルカ | feat. Joakim Brodén (Sabaton) |
| 6 | Brand New Day | マスロック / トラップ | feat. Tim Henson & Scott LePage (Polyphia) |
| 7 | Night Night Burn! | ラテン / メタル | フラメンコギターやラテンパーカッションの導入 |
| 8 | Distortion | メタルコア | feat. Alissa White-Gluz (Arch Enemy) |
| 9 | PA PA YA!! | サマーメタル / ラップ | feat. F.HERO / 作曲: SIAMMETAL |
| 10 | BxMxC | トラップメタル / グライム | 海外でカルト的人気 / SU-METALのフロウ |
| 11 | Starlight | Djent / メタルコア | 藤岡幹大(小神様)への追悼の意が含まれるとの解釈も |
| 12 | Shine | シンフォニック | アコースティックギターから壮大に展開 |
| 13 | Arkadia | スピードメタル | 「Road of Resistance」の系譜にある疾走曲 |
楽曲詳細解説:
- Oh! MAJINAI: スウェーデンの英雄Sabatonのボーカル、ヨアキムを迎えた楽曲。北欧の「ポルカ」のリズムに乗せて踊り狂うコミカルかつパワフルな楽曲で、ライブでは巨大なサークルピットが発生します。
- Brand New Day: Polyphiaのギタリスト2名が参加。彼らの特徴であるクリーントーンのテクニカルなギターと、R&Bやトラップのビートが融合した、BABYMETALのお洒落な側面を引き出した一曲です。これが2025年の『METAL FORTH』での再コラボへと繋がります。
3.4 4th Album: 『THE OTHER ONE』 (2023年3月24日発売)
コンセプト: バーチャルワールドの復元
活動休止(封印)期間を経てリリースされたコンセプトアルバム。
特定のジャンル融合というよりは、BABYMETAL独自の世界観(BABYMETALというジャンル)を深化させた、シリアスで大人びたサウンドが特徴です。
表 3-4:『THE OTHER ONE』主要収録曲詳細
| 曲順 | 曲名 | 音楽ジャンル・特徴 | クレジット・備考 |
| 1 | METAL KINGDOM | アンセム / シンフォニック | 王座への帰還を告げる壮大な導入曲 |
| 2 | Divine Attack - 神撃 - | グルーヴメタル | 作詞: SU-METAL (初の作詞クレジット) |
| 3 | Mirror Mirror | テクニカルメタル / 変拍子 | 鏡の中の世界を表現した複雑な構成 |
| 4 | MAYA | デジロック / オルタナティブ | 虚像と実像をテーマにした楽曲 |
| 5 | Time Wave | シンセウェイヴ / エレクトロ | 80年代リバイバルを感じさせる浮遊感 |
| 6 | Monochrome | ポストメタル / エモ | 作曲: Yuyoyuppe (推測) / スマホライト演出 |
| 7 | METALIZM | トライバル / ダンスメタル | 中近東的な旋律と妖艶なダンスビート |
| 8 | Light and Darkness | EDM / メタル | 光と闇の統合をテーマにしたポップな楽曲 |
| 9 | THE LEGEND | バラード / アンビエント | サックスソロが入る、静謐なエンディング曲 |
楽曲詳細解説:
- Monochrome: 北欧ノワールのような冷たさと温かさが同居する楽曲。ライブでは、モノクロームの世界に観客のスマホライトで光を灯す演出が定番化しました。Yuyoyuppe氏特有の「泣き」のメロディが際立っています。
- Divine Attack - 神撃 -: SU-METALが初めて公式に作詞クレジットに名を連ねた記念碑的な楽曲。自身の言葉で、新たな戦いへの決意を表明しています。
3.5 5th Album: 『METAL FORTH』 (2025年8月8日発売)
コンセプト: 新世代との共闘(コラボレーション)
当初2025年6月の発売が予定されていましたが、制作上の都合等により2025年8月8日に発売が延期された最新作です。
本作は、世界中の新世代メタルバンドやアーティストとのコラボレーションを主軸に据えており、BABYMETALが「メタルのハブ」となったことを証明する野心作です。
表 3-5:『METAL FORTH』収録曲およびコラボレーション詳細
| 曲順 | 曲名 | フィーチャリング/コラボ | 解説・詳細・クレジット情報 |
| 1 | from me to u | Poppy | 以前からBABYMETALファンを公言していた米国のアーティストPoppyとのコラボ。不穏なポップさとヘヴィネスが融合したポスト・ジャンル的な楽曲。 |
| 2 | RATATATA | Electric Callboy | ドイツのパーティー・メタルバンドとの共作。90年代レイヴサウンドとメタルコアが融合。ミュージックビデオの再生数は爆発的で、新たな代表曲となった。 |
| 3 | Song 3 | Slaughter to Prevail | ロシアのデスコアバンドとの異色コラボ。アレックス・テリブルの極悪なグロウルとSU-METALの歌声が対比される。歌詞中の「イチ、ニ、サン、ダ!」はアントニオ猪木へのオマージュであり、魂の叫びを表現している。 |
| 4 | Kon! Kon! | Bloodywood | インドのフォーク・メタルバンドとのコラボ。キツネの鳴き声(Kon)とインドのリズム、そして社会派なラップが融合。 |
| 5 | KxAxWxAxIxI | - | タイトルは「KAWAII」の変形。アルバムのインタールード的な位置づけの楽曲と推測される。 |
| 6 | Sunset Kiss | Polyphia | 『METAL GALAXY』以来の再タッグ。Polyphiaの洗練されたギターインストゥルメンタルと、夏の夕暮れを感じさせる歌声が絡み合うAOR的なメタル。 |
| 7 | My Queen | Spiritbox | カナダの人気バンドSpiritboxとのコラボ。コートニー・ラプラントとの女性ボーカル対決が聴きどころ。モダンなメタルコアサウンドが展開される。 |
| 8 | Algorism | - | ノンタイアップのオリジナル楽曲。AIや計算社会をテーマにした、デジタル要素の強い楽曲。 |
| 9 | METALI!! | Tom Morello | Rage Against The Machineのトム・モレロを迎えた楽曲。「わっしょい!」という掛け声と共に、トムの特徴的なギターソロが炸裂する和メタル。ライブでは観客を座らせてからジャンプさせる演出がある。 |
| 10 | White Flame -白炎- | - | アルバムのラストを飾る楽曲。「紅月」などの「色」シリーズの系譜にあると推測される。作詞: SU-METAL |
楽曲詳細解説と洞察:
- コラボレーションの意義: 『METAL FORTH』は、Electric CallboyやSpiritboxといった、現在のメタルシーンで最も勢いのある「横の世代」や「少し下の世代」と積極的に組んでいる点が革新的です。かつてはJudas PriestやMetallicaといった「レジェンド」に認められる側でしたが、現在はBABYMETAL自身がシーンの中心となり、新しいメタルの形を提示するキュレーターの役割を果たしています。
- 発売延期と期待値: 2025年6月から8月8日への延期はファンをやきもきさせましたが、その間に「RATATATA」がバイラルヒットしたことで、結果的にアルバムへの注目度を最大化することに成功しました。
- Song 3の文化的背景: Slaughter to Prevailとのコラボ曲における「イチ、ニ、サン、ダ!」というフレーズは、日本のプロレスラー・アントニオ猪木の有名な掛け声です。これは、単なる数字のカウントではなく、「闘魂」や「気合い」の象徴として挿入されており、アレックス・テリブルの持つ格闘技的なバックグラウンドとも共鳴しています。
4. 楽曲制作の裏側:クリエイターとクレジットの深層分析
BABYMETALのサウンドは、プロデューサーのKOBAMETALを中心に、才能ある日本のクリエイター集団、そして世界中のトップミュージシャンによって構築されています。
4.1 主要クリエイター(楽曲の設計者たち)
- KOBAMETAL (Key Kobayashi):総合プロデューサー。BABYMETALのコンセプト立案、楽曲の方向性決定、全体のマネジメントを行う「キツネ様」の代理人。彼のマニアックなメタルの知識と、アイドルへの愛情が全ての根幹です。
- Yuyoyuppe (YUPPEMETAL):「メギツネ」「KARATE」「Monochrome」など、BABYMETALの根幹をなす楽曲のアレンジやミキシングを担当。エモ、スクリーモ、メタルコアの要素をポップスに落とし込む手腕は随一で、BABYMETALの「泣き」のエモさを支えています。
- NORiMETAL:「メギツネ」や「RATATATA」の作曲・作詞に関与。キャッチーでありながらフックのあるメロディラインを作成することに長けており、BABYMETALのポップサイドの重要人物です。
- TAKESHI UEDA (AA= / The Mad Capsule Markets):「ギミチョコ!!」「あわだまフィーバー」を作曲。強烈なベース音とデジタルビートの融合(デジタルハードコア)は、彼の作家性が色濃く出ており、BABYMETALの「カオス」な側面を象徴します。
- RYU-METAL / MEGMETAL:『METAL GALAXY』や『THE OTHER ONE』で多くのアレンジを担当。音の厚みとクリアさを両立させた、モダンで洗練されたサウンドプロダクションを支えています。
4.2 コラボレーションにおけるクレジットの変化(共作スタイルの進化)
最新作『METAL FORTH』の「RATATATA」におけるクレジットは、BABYMETALの制作スタイルの変化を象徴しています。
クレジット: Songwriter: Daniel Haniß, Kevin Ratajczak, MK-METAL, Nico Sallach, NORiMETAL, Pascal Schillo。
従来の「提供された楽曲を歌う」スタイルや「ゲストがソロパートのみ参加する」スタイルから、Electric Callboyのメンバー(Kevin, Nico, Pascal, Daniel)が作詞作曲・プロデュースの根幹に関わる「完全な共作(Co-writing)」へと進化しています。
これにより、互いの音楽性が化学反応を起こし、単なる足し算以上のクオリティが生み出されています。
5. 結論:BABYMETALの楽曲が指し示すメタルの未来
本報告書にてBABYMETALの楽曲一覧、詳細、そしてランキングを俯瞰的かつ深層的に分析した結果、彼女たちの歩みは単なるアイドルの成長記録ではなく、メタルという音楽ジャンルの「拡張」と「更新」の歴史であることが明らかになりました。
- ジャンルの破壊と創造: デビュー時の「Kawaii Metal」という奇抜なアイデアを、YuyoyuppeやTAKESHI UEDAといった手練れのクリエイター、そして神バンドの演奏技術によって、説得力のある「本物の音楽」へと昇華させました。
- 言語と国境の壁の突破: 「メギツネ」や「PA PA YA!!」のように、日本語の歌詞や和の要素、あるいはアジアの要素を武器にしつつも、「RATATATA」のように英語圏のアーティストと対等に渡り合い、日本語歌詞のままで世界中のフェスを熱狂させています。
- 2025年の到達点(METAL FORTH): 最新アルバム『METAL FORTH』におけるコラボレーションの多さは、BABYMETALがもはや「日本のアイドル」という枠組みを超え、グローバルなメタルシーンにおける重要なハブ(結節点)となっていることを証明しています。彼女たちは、異なるジャンル、異なる国籍のアーティストを繋ぎ、新しいメタルの潮流を生み出す台風の目となっています。
2025年8月8日の『METAL FORTH』リリース以降、彼女たちの楽曲はさらに多様なカルチャーを巻き込み、メタルというジャンルそのものを、よりカラフルで、より自由なものへと更新し続けていくことでしょう。